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PPESの強み

最高のバッテリーを送り出すために 終わりなき異物との闘い

電動車の心臓部とも言えるバッテリー。航続距離や加速性能、充電速度や安全性といった電動車のパフォーマンスに、バッテリーの品質は大きく影響します。電動車の高いパフォーマンスを維持しながら、安全安心を保つ。そんなバッテリーの信頼性のカギとなるのが、異物対策です。

PPESの製造現場では、世界No.1の品質を目指して、日々、終わりなき異物との闘いが繰り広げられています。その最後の砦となる品質管理部門の取り組みに焦点を当てました。

「異物を制する者は電池を制する」

バッテリーの製造では、「異物」とよばれる破片が混入するおそれがあります。異物は、バッテリーの反応に悪影響を与え、品質や安全性を損なう要因となります。

バッテリーに異物が入ると、何が起こるのでしょうか? リチウムイオンバッテリーは、セパレーターで絶縁された正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで機能します。しかし、異物によって、正極と負極が意図しない経路でつながることがあり、これを「短絡(ショート)」と言います。異物が直接セパレーターを貫通することを「物理短絡」、充放電を繰り返すうちに異物のまわりでイオンが結晶化し、その結晶がセパレーターを貫通することを「化学短絡」と呼びます。

短絡が起こることで、バッテリー内部に異常な電流が発生し、性能の低下や発熱が起こります。また、一番起きてはならない発火要因の一つにもなります。安全安心なバッテリーを製造する上で、異物対策によって短絡の発生を防ぐことは、極めて重要なのです。

加えて、バッテリーの技術開発やコストの低減にも異物対策が関係します。異物を混入させない確実な仕組みができれば、性能向上のためのイノベーションをより幅広く検討できます。また、検査工程で必要となる時間も短縮され、製造コストの低減も可能となります。

「異物を制する者は電池を制する」と、姫路工場、品質管理部の責任者のS. K.は言います。異物との闘いは、バッテリービジネスの成長やEVの更なる普及を実現していくためのカギとなる闘いなのです。

数百万分の一のような確率でも、お客様にとってはそれがすべて

異物が入る原因は様々です。人に付着して工場の中に持ち込まれるケース、原料に付着しているケース、設備からの発塵が原因となるケースなどがあります。

短絡の原因となる異物は、物理短絡であれば50µm(ミクロン)程度、化学短絡であれば20µm程度です。小麦粉一粒が50µm程度ですので、異物混入を防ぐ対策の厄介さが想像できるでしょう。

小ささだけでなく、極めて低確率で発生することが、異物対策を更に難しくします。

バッテリーの生産設備を制作する前の段階で、コンピューター上のシミュレーションを何度も繰り返し、工程を作り込むことで、大部分の異物混入は防止できます。しかし、実物の設備や部品の微細なばらつきは、シミュレーションでは捉えきれません。このような「ばらつき」に起因する異物混入も、極めて低い確率で発生します。バッテリーの注液口に溶接時に発生する金属異物が飛び込んだ例は、車載バッテリー生産以来のレアケース※1でした。こうしたケースは生産前に発生を予測しにくいため、混入の未然防止が難しくなります。

「宝くじのような確率だとしても、1つ1つの製品を受けとるお客さんから見ると、それは100%です。お客様に安心して車に乗っていただくために安全なバッテリーをお届けする。これが我々の使命です」と、S. K.は言います。

品質管理部門は、異物がたとえどんなに小さく、低確率で混入するものであっても、最後の砦となってお客様に届かないようにせき止めています。

「現地現物」の重要性

品質管理部門は、検査で異物混入を発見したら、その都度、原因究明と再発防止策の策定を行い、改善を重ねていきます。

原因特定は、実際の異物の成分や形状から、異物の発生要因を絞っていくのですが、数十メートルの工程の中から小麦粉よりも小さい異物の発生源を特定するのは、とても根気のいる作業です。

カーメーカーや調達先の担当者と協力し合いながら、設計段階で想定されていたことと、現場で実際に起こっていることをすり合わせていきます。その過程では机上での解析だけでなく、担当者が直接現場に向かって情報を集めることも重視されています。

現場に赴き、様々な角度から情報を徹底的に集めて、その中から意味のある情報を選び出す。それを元に解析を行って、原因と対策を導き出す。このような、「現地現物」の考え方は、トヨタ自動車とパナソニック・三洋電機からPPESに受け継がれた英知の一つです。

「『絶対に犯人を見つけるんだ』という強い意識を持って、現地現物に当たることが重要です。お客様にバッテリーを提供するためには、いくら敵が小さくても、発生確率が低くても、根気強くとことんこだわって、最後まであきらめずに問題の原因を特定するための手を打っていきます」(S.K.)

異物に対する感度の高い人材、異物にこだわることが出来る人材を育成する一方で、こうした能力や意識を、属人化せずにチーム全体で共有することも大切です。その時点での最善かつ運用可能なやり方をマニュアル化することで、チーム全体の業務改善につなげていきます。

関連したユニークな取り組みとして、PPESでは、これまで気づかなかった重大な問題の兆候を発見した従業員に対して、「『いつもと違う』を発見表彰」も行っています。一人ひとりの目を重要な検査の力と位置づけ、「いつもと違う」に気付く職場風土を築くことが「安全な職場で高品質な工場」つながることを共通認識とすることで、工場従業員のモチベーション向上につなげています。

終わりなき異物との闘い

S. K.に、今後の目標について聞いてみると、「目標は『ゼロ』です」と返ってきました。

「異物は『ゼロ』にこだわる。ゴールはありません。この仕事は、特定の目標値があって、そこで終わりというものではないのです。確かに、異物を減らすことで製品ロスやコストの低減は図れるかもしれません。ただ、品質を守る最後の砦として、そこは言いたくない。車1台、バッテリー1個がお客様にとっての全てです。だから、わずかな異物であってもお客様にご迷惑をかけることが私にとって一番つらいのです」(S.K.)

「異物ゼロへの挑戦」がS. K.の使命かつ信念です。そのための人材育成にもこだわって、終わりなき挑戦を続けています。

PPESの異物との闘いは続きます。

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